2016年6月5日日曜日

私が被害者となった民泊盗撮事件の概要

ご覧いただきありがとうございます。

はじめに申し上げておきます。
私は民泊反対ではありません。
民泊のプラス側面も理解しているつもりです。
良心的なホストとゲストによる民泊は本当に素晴らしいものです。

これから私が被害者となった民泊盗撮事件の概要をお話しいたします。
でも、被害者が特定できるような情報はお話しできません。
私以外にも被害に遭われた方が多数おられます。
彼らに中傷などの二次被害を絶対にもたらしたくないからです。
ご理解ください。



民泊盗撮事件概要】


  • 事件の背景―民泊の構造的問題のある中で事件は起こった―

 事件は、2014年、古くからの村落にある家で発覚しました。大変敷地の広い家で母屋と離れがあり、家主は、日本の暮らしを体験したいというゲストにその離れを宿泊場所として提供するホストをしていました。当時私は家主が経営する会社で働いており、勤務場所はゲストに提供されていた離れと同じ敷地内にあり、ゲストと毎日のように顔を合わせていました。

 ゲストの多くは外国人旅行者の若者で、この事件の被害者の多くは彼らです。ゲストは仲介サイト上でこの場所を知り、メールでホストとやり取りしてホストから許可を得た者だけが宿泊していました。ホストは宿泊希望者の顔写真や年齢性別などを確認したうえで宿泊許可を出す事が出来ていました。ゲストも事前に仲介サイト上で「ゲストによるホスト評価」を確認することが出来ていました。
 現在、民泊では「相互レビューシステム」が悪質なホストやゲストの排除に効果的だとされていますが、これだけで盗撮事件防止をすることはできません。それどころか、「相互レビューシステム」を悪用される可能性すらあります。私はゲストたちに「どうしてここを選んだの?」と聞いたところ「ホスト評価が高かったから」という答えが最多でした。加害者ホストは事件発覚以前、高いホスト評価を得ており、それが次々とゲストを呼び、結果多数の被害者を生む要因となりました。表では温かなホストを演じ、裏ではゲストの知らないところで彼らを性欲の道具にする。現在の民泊は、このような卑劣な犯罪を助長する民泊システムの構造的問題が放置されたままです。
 民家での宿泊、外国人旅行者、仲介サイト、ホストとゲストの双方が事前に個人情報を確認できる環境、ホスト評価。現在行われている民泊同様の環境下で事件は起こりました。

  • 事件の内容―場所で変わる罪の重さ、被害者数は関係ない―

 盗撮カメラはゲスト用浴室に設置され、加害者の証言によると設置期間は1~2年間。設置期間を2年間として、残された記録から確認できたゲスト人数は100名以上。私も汗や汚れの多い仕事だったため家主に勧められ数回浴室を使用しました。
 事件発覚は、加害者がパソコンで盗撮映像を見ている現場をゲストが目撃したために起こりました。この偶然の発覚が無ければ、今も被害者が増え続けていたかもしれないと思うとゾッとします。目撃者は加害者がパソコンで盗撮映像を見ている様子を携帯カメラで撮影して、浴室からカメラを発見したうえで警察に通報。警察は盗撮カメラ・録画デッキ・盗撮映像が録画されたDVD1枚を押収。加害者は任意同行され、その後刑が確定。
罪名は軽犯罪でした。
 迷惑防止条例違反ではありません。私も目撃者となった被害者たちも愕然としました。立ち小便と同じ重さの罪なのです。罰則は1万円未満の科料で、加害者側の弁護士によるとすでに支払われたそうです。
なぜ軽犯罪なのか。警察の説明によると「自宅での盗撮で迷惑防止条例が適用される公共の場所ではなかったため」
 民泊での大半の盗撮は、被害者が何人いようが軽犯罪法違反にしかなりません。ホテルのロビーでの盗撮は迷惑防止条例が適用されます。迷惑防止条例では公共の場所における盗撮を取り締まっています。公共の場所とは「不特定もしくは多数が同時に利用しうる状態の場所」若しくは「不特定かつ多数が同時に利用しうる状態の場所」のことです。全国的な統一は図られていない模様です。ちなみに「不特定かつ多数が同時に利用しうる状態の場所」との警察や弁護士の見解を多数確認しました。この見解の方が主流のようです。
 民泊にホテルのロビーのような「不特定もしくは多数が同時に利用しうる状態の場所」「不特定かつ多数が同時に利用しうる状態の場所」がどれほどあるでしょうか。チェックインを済ませればゲストは特定された人になります。そして民泊の部屋や浴室を同時に利用する人数は1人〜数人の少数です。つまり民泊を同時利用するのは「特定少数」ということになります。「特定少数」が積み重なって
膨大な被害者数になろうが迷惑防止条例は適用されない。民泊はそういう場所です。
民泊で盗撮事件が発生した場合の被害者数を試算してみます。
4人部屋を10室運営するホストが犯人だった場合
盗撮期間2年、稼働日数年間180日とします。
4×10×2×180=14,400人
被害者は14,400人です。

  • 事件後―法律で救われない被害者―

 事件発覚直後の深夜、目撃者となった彼らは警察で事情聴取を受け、一人の若い外国人女性は自分の映像を確認することになりました。朝、警察から戻った彼らは事情聴取の疲れも取れないうちに追い出されるようにホストの家を去りました。
 私は事件の数日後に彼らに会いに行き「カメラに気がつかなくてごめんなさい。守ってあげられなくてごめんなさい。」と謝罪の気持ちを伝えました。彼らに必要なのは犯人の謝罪で、私の謝罪など何の足しにもならない事は分かっていましたが、私にはそれしかできませんでした。
 そのとき自分の映像を確認することになった若い外国人女性の言葉が今でも忘れられません。「負けないで。私も負けない。大丈夫、私たちが罰する事が出来なくても、カルマが彼(犯人)を罰します。」そう言った彼女の目から涙が伝い続けました。
「日本が大好きなの。もうすぐ日本で働くのよ。」と言ってキラキラとさせていた彼女の目に涙があふれている。なんてこと!なんてことなんだ!この罪が軽犯罪なのか!これが日本という国なのか!怒りと悲しさと悔しさと無力感があふれて彼女と一緒に泣きました。

 カルマとは業(ごう)のことです。その人が犯した罪によってその人自身が罰せられるという宗教思想です。彼女はわかってしまったのです。日本の法律の下では刑事でも民事でも自分の被害が回復される事は無いと。「カルマが犯人を罰する」そう思って傷ついた心を何とか回復させようとしていたのです。そしてその言葉で傷ついた私の心まで救おうとしてくれました。

  • 外国人旅行者にとっての訴訟の困難さ

 盗撮での精神的苦痛に対する損害賠償金額の相場は10万円〜30万円です。弁護士費用を差し引くと赤字になる場合も多くあります。外国人旅行者の場合、さらに滞在費の負担がのしかかります。法テラスでは外国人旅行者に対しても無料弁護士相談を実施していますが、数日〜数週間待ちです。法テラスを利用しない通常の弁護士相談は、5000円/毎30分。事件内容を説明して弁護士との委任契約を交わすまでにどのくらいの時間がかかるでしょうか。着手金の負担もあります。このように外国人旅行者が日本で訴訟を起こすことには大変な困難が伴います。特に若者の外国人旅行者は総じて経済力が弱くさらに訴訟は困難なものとなります。

  • 被害を伝えられない苦悩

 犯人も仲介サイトも事件告知を行わなかったため、告知は事件を知る被害者が負うところとなりましたが、事件を知らない被害者が告知によって傷つくことを恐れて誰も告知を行っていません。まるで何も知らない被害者を犯人や仲介サイトによって人質にとられたような気持ちです。この仲介サイトの仕組みの中で他にも同じような事件が起こっているかもしれないのに、構造的な問題がわかっているのにそれを公表することが出来ないのです。ゲストが犯人でホストの方がカメラを発見した場合も被害告知に苦しめられます。ホストとゲストともに悪意の利用者から守られる仕組みが必要です。

  • 集団訴訟は起こらない

    集団訴訟が起こる可能性は非常に低いです。今回の事件でも起こっていません。上記のように事件を知った被害者はおそらく他の被害者に被害告知を行いません。事件を知らない被害者が事 件を知るための残る可能性は、警察による実名報道発表ですが、警察がこれを行うかは未知数です。仮に行われたとしても、世界中に散らばる被害者に情報が伝 わるためには報道が欠かせませんが、報道で取り上げられるかも未知数です。

     さらに、情報が伝わったとしても誰が集団訴訟 をまとめるかという問題が残ります。仲介サイトはこのような義務を負ってはいませんから、わざわざ労力のかかる訴訟窓口を行うとは考えられません。そうす ると、被害者の誰かがその役割を負うことになります。勝訴したとしても自身が得られる賠償金額はごくわずかです。膨大な労力を割いて訴訟窓口をするような 被害者がいるとは考えにくいです。

     

  • 軽犯罪での盗撮に被害者は存在しない

 警察で言われた言葉にも傷つきました。「軽犯罪は行為犯で被害者なき犯罪です。盗撮カメラをしかけた行為が犯罪で、被害者の有無は問いません。あなたは自分の事を被害者だと言っていますが、刑法上の被害者は存在しません」このように言われました。国によって存在しないものとして扱われる。その無力感が一層私の心を傷つけています。また、被害者の有無を問わないなら、何故あの若い外国人女性に自分の映像を確認させたのかわかりません。

  • 民泊仲介サイトも盗撮の危険性を認識

日本の民泊仲介サイト「とまれる株式会社」代表取締役の三口聡之介 氏が民泊での盗撮の危険性を認識するコメントをニュースサイト「Compass」で発言されていました。以下抜粋

(盗撮の危険性は?)
もちろん存在する。
今後は民泊として営業する登録をする必要があるため、
民泊の情報を登録した上で盗撮はやりにくいのではないかという見方もある。
2015年11月24日

とまれる代表盗撮危険性認識
この認識は非常に危険です。実際の事件を経験してわかった民泊で盗撮が起こる要因について別の記事で投稿しています。
http://mia3830.blogspot.jp/2016/05/blog-post_84.htmll
  • 皆さまに伝えたいこと

    民泊盗撮防止対策が必要です。今回の民泊盗撮事件は偶然起こったものではありません。民泊システムの構造的問題から起こるべくして起こったものです。盗撮事件自体珍しいものではありません。毎日のように盗撮事件報道があります。民泊ホストやゲストだけが盗撮を行わない善意の人々とは考えられません。

    こちらのページで、日本では何人に一人盗撮犯がいるのかを推計しています。
    日本では何人に一人盗撮犯がいるのか計算してみた
     
    今回の事件を起こした犯人が登録していた仲介サイトのホスト登録数は400程度でした。大手民泊仲介サイトAirbnbの日本の登録部屋数は約3万室、ホスト数はおそらく数千です。他にも仲介サイトは多数存在しています。日本のホスト数は数万に上ると考えられます。ゲストはホストの数百倍〜数千倍です。ホストとゲストの全てが安全なユーザーとは考えられません。

     現在の民泊は黎明期の自動車産業のようなものです。私たちが安心して自動車に乗ることができるのは様々な安全対策が講じられているからではないでしょうか?シートベルト・エアバック・ブレーキアシストなどによる自己防衛。交通法規による安全な使用ルールの明確化と違反者への制裁。警察の監視による違反者摘発。各種保険による被害の回復。これらの被害予防と被害回復が安全対策として講じられているからこそ自動車はここまで普及したのではないでしょうか?

     民泊がもたらす経済効果は10兆円とも言われています。しかし、何の盗撮防止対策もないまま民泊推進を推し進めた後に大規模な盗撮事件が発覚すれば「安全な国ニッポン」のイメージは大きく損なわれ、その経済効果も薄まるでしょう。事前の対策が必要です。
 対策コストは民泊利用者の少しずつの負担で十分に捻出できます。 
1泊あたりゲストとホストが50円ずつ盗撮対策コストを負担したとします。
稼動日数年間180日の場合
50円×2×180日=18,000円

4人部屋なら 18,000円×4=72,000円

私は以下のような民泊盗撮防止対策があればと考えています。
  • 盗撮発見のプロによる調査事前通告なしの抜き打ち調査
  • 盗撮発見器による自己防衛サポート
  • 集団訴訟サポート
  • 緊急相談窓口
  • 被害告知を希望するか否かの意思確認(仲介サイトへの登録時)

これらの被害予防と被害回復を含む対策をとることで安全な民泊を実現することができます。万が一被害にあったとしても「見捨てられない」サポートに被害者は心救われます。私が辛かったのはボロボロの精神状態で犯人と対峙して自分の被害を立証しなければならないということでした。
コスト負担は宿泊代の何%という形式で規模に応じた負担にすれば不公平がありません。民泊利用者が少しずつ負担し合うことで安心安全な民泊を実現することができます。
しかし、私一人がいくら声をあげてもこのようなシステムは実現しません。皆様お一人お一人の声が必要です。
政府や仲介サイトに手渡す民泊盗撮防止アンケートを実施しています。
所要時間は5分程度です。どうか皆様の声をお聞かせください。
民泊盗撮防止アンケート(日本語版)
民泊盗撮防止アンケート(英語版)外国人向け

時間がありません!官庁で行われている民泊サービスのあり方に関する検討会で6月中に報告書がまとめられます。報告書を基に法整備がなされます。
報告書に間に合うよう
6月20日にアンケート中間集計を行います。
集計日は変更いたします。
日程についてはまだ未定です。 
 法整備に間にあわせるには、おそらくこれが最後のチャンスです。どうか皆様ご協力よろしくお願いいたします。

  

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